問題は”規模”ではなく”部位”である
駅構内におけるニアミス
電車間の乗り継ぎのため、駅構内を急ぎ足で歩く。
時刻はam8時、通勤ラッシュの時間だから、とても人が多い。
ここ最近は観光客が急増し、ただでさえ人口密度の高い駅構内は、その容量を完全にオーバーしているように見える。
人と人が、常に”ニアミス”状態ですれ違い、誰とも衝突せずに乗り切れたときには、奇跡すら感じさせられる。
その日は違っていた。
航空機で例えるなら、尾翼同士の衝突と言えるだろうか、間違いなく大惨事である。
しかし、人間なら、ちょっとぶつかっただけ、という感じで片づけられてしまうことである。
その日の衝突における問題は、”規模”ではなく、”部位”だった。
私の1メートル前方を女子高生が歩いている。
髪型とエナメルバックから、何かの部活に属しているスポーツ女子であることは間違いない。
1メートルの間隔を保ちつつ、早足で歩く私と女子高生。
スポーツ女子の歩行動作は力強い、バッグを下げていない右腕を前後にしっかりと振り、大きなストライドで歩く。
駅構内の人々はひとつの大きな流れとなっており、その流れと速度に合わせ、編成を乱さぬように進まなければいけない。
つまり一個人がスピードに強弱をつけることは許されない。
心を殺し、流れに身を任せることで、物事は快適に、滞りなく流れるのだ。
その流れにゆがみが生じる。
スポーツ女子が何を思ったのか、歩く速度を急激に抑え、私との距離が急接近。
力強く振られていた腕が、振り子の要領で、私の股間を直撃。
まさにジャストミート、これ以上ないクリティカルヒットであった。
「はうっ!!!」思わず出た言葉がこれだった。
身体はくの字に曲がり、しゃがみ込みそうになる。
流れを乱さぬよう必死で歩く私。
個人の事情など、この大きな流れの前では通用しない。
私の股間がどのような状況であろうと、流れはとどまることなく、動き続けるのだ。
くの字で、ひた歩き、必死の形相でなんとか電車に乗り込んだ。
女子高生は知ってか知らずか、一度も振り返ることもなく別の流れに吸収されていった。
これぐらいの衝突はいつ起きてもおかしくない、自分の背中側、視界に入らない場所で起きたことなど、皆、興味はない。
自分の手が、後方の人に当たったな。これぐらいにしか思っていないだろう。
しかしだ、スポーツ女子よ、今、あなたの右腕は私の股間にジャストミートしていたのだ。
問題は”規模”ではない。”部位”である。
aloha shigeru!!!