日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

年が明け、男として皆無な私が掲げた今年の目標¥

f:id:gakushigeyama:20170109160151j:plain

 年が明けた。めでたく明けたという事で、新年の目標を一つ。と言ってみた所で、大概の場合は雪解け頃にはその目標も忘却の彼方へ追いやられてしまう。

 しかし三十路を二つばかり過ぎたいい大人な私は、今年こそはやらねば、という思いが烈火のごとく強い。しかしながら、烈火だって消失する時は一瞬な訳であって、特にこの胸に宿る烈火は溜息一つ、鼻息一つで容易に消え失せてしまう程度の軟弱なモノである。それでは烈火ではないのではないか、とあなたは言うかもしれないが、少なくとも現在、今この瞬間においてはこの思いは烈火のごとくなのである。

 何が言いたいかもうおわかりの事だろう。そうなのだ。私は今年こそは貯金を、あの不幸の八割を回避できるという魔法の紙切れを一枚でも多く、集めるつもりなのである。

 貯金をするにあたり、様々なサイトをサーフィンし、眠れぬ夜を一人で過ごし、またお金にまつわる書籍を読み漁り、仕事は何一つ手に着かず、上司に目を付けられ、肝心の収入そのものを失い欠ける寸前まで追いやられた。そして、そんな日々の積み重ねにより、私が出した結論は「お金を好きになること♥」「アイラブ・マネー」である。

 この結論にたどり着いた夜、私は一人で「なんだそんな簡単なことなのか、ほぼほぼ出来たようなものだハッハッハッ、ハッーハッハッ」と高笑いをし、結論を出すまでに費やした時間を全て埋めるかのように、深い眠りへと落ちて行った。

 昼頃に目が覚め、布団からモゾモゾと這い出して、煙草を一服。そして独り言を呟いた。「そうだ、長財布を手に入れよう」と。

 長財布は銭が貯まりやすい。紙幣を折り曲げることなく、丁寧に真の愛を持って扱うことが出来る。しかし、ある人はそんなものは関係ない。長かろうが短かろうが二つ折りでも七つ折でも、貯めれる奴は貯めれると言い放つ。おそらくは、貯金において、財布は関係ない。という事に気付いていながらに、何事も形から入ることで自分をその世界に没入させてきた過去の経験から、ここはいっちょ大人として恥ずかしくない長財布を手に入れ、一目で貯金してます風な、そんな本革の匂いを醸し出す男を目指すことを誓ったのだ。

 しかしである、愛する紙幣達のマイホームとなるはずの長財布、こいつを購入するということは、つまりは愛する紙幣達、その物を犠牲にしなければいけない。ということと考えて間違いない。せっかく購入したマイホームなのに入居者がいないのでは、本末転倒で、夜な夜な長財布を取り出し、真新しい皮の匂いを嗅ぎ、ファスナーの開け閉めをするだけの日々が繰り返される。これでは心が病んでしまうのも時間の問題だと思われるので、とりあえず今の財布のままで当面はやり繰りしていこうと決意しかけた瞬間、ネット上で私の購買意欲を湯水の如く溢れ出させるイケてるモスグリーンの長財布を発見。お値段三万円。迷うことなくワンクリック。後悔と羞恥と絶望が押し寄せたため即座にキャンセル。そんなことを三度繰り返し、最終的には無意識の中で購入の手続きを完了し、ダンボールが自宅に到着することで、購入していた事実を知らされたのであった。

 そして今、私の手元にある長財布。これは嘘偽りなく素晴らしい品物である。モスグリーンが放つ光沢、ファスナーの開閉は驚くほどにスムーズである。何よりも紙幣達が伸び伸びとくつろぎ、彼らがこの家からは決して外出しないインドア派の趣向を持っているかと思わされるのだ。無意識の私よ、買ってくれてありがとう。本当にありがとう。これで貯金はほぼほぼ完了したようなものだよ。私の心は病むどころか、高揚し続け、天にも舞い上がる思いで、朝に向かってまどろんでいくのであった。

aloha shigeru!!!