ATMでの”一気下ろし"心が強くなければいけない
ATMの使用回数が多い人は、お金が貯まらない傾向にあるらしい。
何かあるたびに、お金を下ろすという行為は無計画の表れなんだそうだ。
これには深くうなずかざる終えなかった。
痛いほどに心当たりがある。
一気に下ろして、そのお金でひと月を過ごす。これがお金を貯めれる人。
この”一気”という下ろし方に、なぜだか恐怖を感じ、小分けにして、イベントがある度に下ろしてしまう奴、これが駄目な奴。失礼…つい口が悪くなってしまった。これがお金を貯めれない人である。
浪費癖のある人々は、手元に大きなお金があることを、ことのほか嫌がる。なぜなら使ってしまうから。一応は自分という人間を、ある程度理解している点については評価していただきたい。
だから、下ろすお金はひどい時では千円や二千円。
一度、五百円を下ろしたことがあるが、カランという音と共に小銭が一枚出てきた時は、さすがに恥ずかしくて、後ろに女子が並んでいないことだけを切に願った。
このように、少額ではあるけれど、やたらめったら下ろす回数が多い奴の口座は、結局スッカラカンになる。
改心して、ATMの使用回数を減らそう。そのためには”一気に下ろす"という、荒行に挑まなければいけない。そんな状況に耐えれるメンタルタフネスを育てなければいけない。
つまり、心が弱いからいけないのである。
貯金も禁煙もダイエットも、意思の強さがあって成し遂げられる。
滝に打たれ、頭を丸めて千本ノックを受ける。食事は精進料理のみ。
脂肪を極限まで減らし、二十代の身体にカムバック。
心身共に万全の状態でATM機の前に立つ。
震える右手、無機質な機械音。暗証番号を入力し、いよいよ金額を打ち込む。
一か月の給料の三分の二を”一気下ろし"
無事にやり終えた。
心拍数は正常時脈拍を遥かに上回り、動悸、息切れが止まらない。
動悸、息切れには…なんだっけ?あれを飲まねば治まりそうにない。
財布の膨らみが想像以上で、少し誇らしげに思うものの、同時にとてつもなく大きな不安を抱えてしまったような気がして、落ち着かない。
翌朝、あまりの落ち着かなさに銀行に向かい、半分ほど入金しかけたが、意思の強さで乗り越えた。
戦いは始まったばかりである。
aloha shigeru!!