日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

飲み込むって本当に大切な力なんだ 身に染みて感じた

訪れた違和感、飲み込む事への恐怖

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 やっとこさ満足に飲み込む行為が出来た事で、自分の体が通常に戻りつつあるのだと感じることが出来た。

 完治とまでは行かないものの、数時間前と比べて、どれほどラクになった事か。
 飲み込むって本当に大切な力なんだ。

 午前中から、喉に明らかな違和感があった。
 違和感は次第に痛みに変わり、午後には食欲が消えるほどのモノに。
 「俺、痩せるな。」そう確信したのは。飲食物はおろか、唾を飲み込む事すら出来ない状態に陥った時だった。
 そして、事態は喉だけで済まない。全身を悪寒が走り、意識が朦朧とし出したのだ。
 
 ちょうど仕事終わり、これから京都まで、この身体コンディションで帰宅する自信はない。
 悩み抜いたあげく、会社にて夜を明かす事に決定。
 帰宅時間を考えれば、睡眠時間をしっかりと取る事が出来るからである。
 近くの天然温泉に駆け込み、更衣室で速攻全裸に。
 湯船に向けてマッハで走る。ここで手間取れば、生死に関わるからである。それほどまでに寒気は強い。
 全身を芯まで温め、会社に戻る。いつでも泊まれるように用意してある寝袋をホットカーペットの上に引き、即座に就寝。
 朝になれば全てがよくなっているはずだ。誰もいない社内の静けさに孤独を噛みしめようとするものの、これだけ意識が朦朧としていては、孤独に浸る余裕もない。

 私の身体がどうあれ、朝はいつも通り訪れる。
 全身の寒気、倦怠感はかなりマシになったものの、喉の痛みは相変わらずの状況である。
 声も思うように出すことが出来ず、人との会話もままならない。
 飲み込む事に恐怖を感じ、恐怖を乗り越えるには勇気が必要だ。
 唾一つ飲み込むのに、いちいち勇気が必要な訳で、これでは精神的に持って、二日だろう。
 救いだったのは、その日の午前中は内勤で、事務所仕事がメインだった事(本来のメインは接客である)、そして何より我が社の入っているビルは二つ下の階に内科があるという事である。
 
 上司に病院に行く旨を伝え、エレベーターに乗り込む。
 肛門科が専門で、内科もやってます的なM崎医院。
 ここのM崎先生とは個人的にも仲がいい。
 診察室に通され、私の顔を見た瞬間にM崎先生は言う。
 「おっ!!ついに性病か。スケベばっかしてるからや。」
 この先生はいつもこんなノリである。
 以前、インフルエンザの予防接種で訪れた際も、お気に入りのキャバ嬢の話を一時間以上聞かされ、ぐったりした記憶がある。
 会話の九割はエロ。絵に描いたスケベ医師なのだ。
 こういう下ネタトークに対して、いつもは万全の返しをする私だが、今回ばかりは、声が出ないために応える事が出来ない。
 マスク内でモゴモゴ言ってる私を見て、医師としての自覚を取り戻したのか、真面目な顔で「口を開けなさい。」と言う。
 時間にしてコンマ5秒。つまり1秒の半分だ。
 「扁桃腺がやばいね。高熱出たでしょ。」
 扁桃腺への認識が薄い私に向け、パソコンでわざわざ画像を出してくれて説明してくれる。
 痛み止めと感染症を防ぐ薬の二種類を出してくれる事となった。
 エロトーク皆無となり、本来の姿を取り戻した診察室。
 M崎先生の寂しそうな視線を背中に感じつつ、足早に病院を後にした。

 会社に戻り、勇気を振り絞って飲み込んだ薬二錠、飲み込んだ瞬間から痛みが緩和されている気がする。
 痛みがラクになり、声も通常の声量を出せるようになるまで三十分とかからなかった。
 
 昨日の午前中から、痛みの影響でほぼ飲まず食わず。
 痛みが多少は残りつつも、水をゴクゴク飲み、パンにかじりつく。
 飲み込める事に、これほどの喜びを感じるとは。
 飲み込む力は大切だ。

 そこに一通のメールが。
 先程のM崎先生からである。
 ”調子はいかがでしょうか?薬の影響で、痛みは収まっていると思います。所で、明日の予定はいかがですか?先日、メイド喫茶で出会いました、新人メイド、シュリちゃんとの話を聞いて欲しいです。連絡お待ちしております。”

 これもまた、飲み込まなければ行けない現実のようだ。
                      aloha shigeru!!!