日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

間違いなく有名人がやっているスタイル、この春のトレンドはこれで決まり

マスクにグラサン、ニットを深々と 

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 深々とニット帽を被り、グラサンにマスクという完全な変質者スタイルで現れた友人。

 突っ込みを入れずにはいられない状況である。
 「変質者か!!」
 友人は苦笑いで答える。といっても表情はわからないので、おそらく苦笑いだ。
 なんでも、酔っぱらって夜の街を徘徊し、キャバクラかなんかの、呼び込みの兄ちゃんに顔面を二発ほど殴られたらしい。
 気が付けば、自分の周囲には人が集まり、救急車の車内にいたようである。
 「お前、何したの?」と聞いても、酔ってて記憶がないらしく、完全に後の祭り状態だ。
 グラサンをとって、生々しい傷跡を見せてもらったが、眼球に出血があり、右目はいわゆる試合直後のボクサー状態。
 鼻もお茶の水博士に引けを取らない腫れようである。
 
 この日、私達二人は、買い物をするために、集まった。
 変質者を引き連れ、休日の人でごった返した街を歩く。
 商店街を目当てのお店に向け歩いていると、向こうから同じ様な変質者が。
 さらに、コンビニの前でたむろしている人も、同じ変質者スタイル。

 ちょっと待て。見渡せば、街行く人の内、けっこうな割合がこのスタイルではないか。

 ニットをキャップにしている人もいるが、そこら辺は個人の主張とういうモノだろう。
 流行りなのか、この春のトレンドはグラサンにマスク、ニットを深々と被り、変質者とまでは言わないまでも、有名人気取りをする事。
 芸能人がやれば、誰もが真似をし、一つのブームとなる。
 グラサンにマスク、ニットを深々と、確かにどの有名人もやっている不動のスタイルではないか。 
 世間はついに、素性を隠すための仕方なきスタイルまでも、一つのトレンドとして君臨させるつもりなのかもしれない。
 

 キムタクも工藤静香もかなりの確率で愛用している定番のスタイル。
 考えてみれば流行らない訳がない。
 ビジュアルに自信のない人でも成り立つのは間違いない。
 似合う、似合わないなどは、このスタイルには関係がないのだ。
 だって顔見えないし。
 結果として、トレンドの最先端を突っ走る事となった友人。
 私も本日の買い物で、トレンド三点セットを買い揃えようか、そんな事を考えながら、目的の店に到着。
 

 店内をブラブラとめぼしい物はないか、見て回る。
 ニット帽を発見。鏡の前で被ってみる。
 正直似合わない。しかし、ここにグラサンとマスク。
 似合う似合わないの問題ではなくなる。
 なんとラクな、それでいて顔がわからない事が醸し出す怪しげな色気。
 見えないものを見たくなるのが、我々人類の性質だ。
 色気と人間本来の性質、これらを巧みに操るスタイル。
 この春の私のスタイルは決定。
 ニットを被ったままに、グラサンを探す私。
 店の定員が歩み寄り、友人に向かって一言「花粉症ですか?完全防備ですね。」
 

 季節は花粉舞い散る春なのだ。
 予防として誰もが試みるスタイル、グラサンにマスク、ニットは偶然か。
 
 鏡に映る、似合わないニット帽を被った男。
 恥ずかしげに俯き、頭からそっとニット帽をとり、元の位置に戻したのであった。
                  aloha shigeru!!!