日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

イヌ派なのか、ネコ派なのか、私の祖父の場合

今週のお題「犬派? 猫派?」

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 私の知り合いが、一番かわいい女性に向かって、「イヌ派ですか?それともネコ派ですか?」という質問をしたところ、女性陣一同がなんとなく引いたので、こういう席でこの質問は寒いんだということが判明。

 飲み会の席でのはなしである。

 大きく分けて、イヌかネコ。
 とても不思議なわけ方だ。
 ペットとして飼われている動物のトップ2だから、このような質問が幅を利かしている訳だ。
 もはや、白か黒、男子か女子、ウンコかシッコ。
 これらと肩を並べるほどの二者択一の代表格ではないだろうか。
 また、ただの派閥にとどまらず、イヌ顔かネコ顔、これらはまだわかる。
 さらに事態は無理矢理で、イヌ型の性格、ネコ型の性格というように、かなり強引な性格診断まではびこっているらしい。
 
 他人がイヌ派なのか、ネコ派なのか。
 そんなことよりも、これからトイレに向かう女性がウンコをするのか、シッコをするのか、こちらの方が断然気になる。
 これが私の正直な思いだ。

 そんな私でも、イヌ派、ネコ派という質問で、鮮明にリンクする記憶がある。
 
 まだ祖父と祖母が元気でいてくれた八年も前の話だ。
 元気とはいえ、祖父は少しづつボケが始まっており、その介護をするために、私の家族は母親の実家に移り住んだ。
 
 父と母、私と妹。そして祖父と祖母。
 六人が一つ屋根の下で暮らしていたあの頃。
 夕食は六人そろって、テーブルをかこむ事が多かった。

 その日のメインはかす汁
 冬場は二日に一度は夕食に登場する、定番中の定番。
 限界まで温められた、かす汁が、各自に配られる。
 それぞれが、口を付け、内蔵から暖をとる。
 祖父は熱さのあまりなかなか口を付けることが出来ないようだ。
 

 それを見た妹が「おじぃちゃんネコ舌なん?」
 祖父が、かす汁を置き、答えた。
 「そうだ。私はネコ好きだ。」
 想定外の変化球にかたまる、一同。
 一瞬おくれて、祖母が突っ込みを入れる。
 「なにを言ってるの、あなたはイヌもネコも嫌いでしょう。」
 これも違う。
 突っ込みどころを完全に間違っている。
 質問はネコ舌か否かである。
 一瞬にして、イヌ好きなのか、ネコ好きなのかに話題を強引に変える、離れ業。
 ボケの上にボケをかぶせ、すばらしい夫婦漫才を見させてもらった。
 
 当時、ボケはじめた祖父をかかえた我が家は、これから迫り来る試練を思い、暗い未来を想像することしか出来ないでいた。
 それでも、こんな二人の会話が夕食の時間を明るくしてくれていたことも一つの事実である。
 
 あれから八年、祖父も祖母も旅立たれてしまった。
 イヌ派、ネコ派。
 少なくとも私の祖父は両方嫌いだったようである。

                                                     aloha shigeru!!!