世の中金だと言う後輩に、私が放った「北斗の拳」、ケンシロウの名言
「ならば、俺は愛のために戦おう。」
花粉症に蝕まれつつある肉体を引きずり、薬の影響なのか朦朧とする意識の中で、なんとか仕事をこなしている私の耳に女性の話し声が聞こえてくる。
一人は私の後輩、もう一人はそのお客様である。
「やっぱり世の中お金ですよね。」と後輩。
「そうです。間違いなくお金です。」とお客様。
期待と希望で満ちるこの季節、昼間からなんという下世話な話を。
それでもこんな話を、ついこないだ大学を出たばかりの若者が口に出してしまう所が、今の世を映し出している気がしてならない。
私は鼻水をすすりつつ、二人の前に歩み寄る。
後輩が私に気づき、同じ言葉を繰り返し訪ねた。「やっぱり世の中
お金ですよね?」
私は胸を張り答えた。「ならば、俺は愛のために戦おう。」と。
全く持って予想通りの反応が帰ってくる。
キョトンとした表情、このオッサンいい年こいて、何言ってんだという二人の顔。
いつも通りである。
こんな反応を、年間で数回は受けている私にとってはまさにいつも通りの事なのだ。
驚くことでもない。
ケンシロウを信じた、あの頃の私
「ならば、俺は愛のために戦おう。」この名言をご存じだろうか。
漫画「北斗の拳」で、あのケンシロウが放つ名言である。
実際、名言と言われているのかどうかは知らないが、当時小学生だった私の記憶には鮮明に焼き付き、未だその陰を潜めることがない。
「愛ゆえに人は苦しまねばならぬ。愛ゆえに人は悲しまねばならぬ。こんなに苦しいのなら、愛などいらぬ。」
帝王サウザーがケンシロウと最後の戦いを迎えた時に放った言葉だ。
帝王サウザーは、過去の辛く悲しい経験から、愛を捨て、人を恨み、悪の帝王となった。
そしてケンシロウはサウザーと、その戦いを見守る、全ての人に向け誓うのだ。
「ならば、俺は愛のために戦おう。」と。
戦いに勝ち、愛の強さを噛みしめるケンシロウと周囲の人々。
小学生だった当時、これを観て、「一番強いのは愛の力なんだ。」と感じた私。
愛がなんなのか、検討もつかない小学生がケンシロウの強さを観て、とりあえず信じた愛。
形ないモノだからこそ、信じる事が出来たのだろう。
それから二十年、世の中の酸いも甘いも、それなりに経験してきたつもりの私。
信じた彼女にこっぴどく裏切られた事も数度。
飲み会に行けば、男を人ではなく、お金として観ている女子の視線にもさらされ、挫けそうになる日々。
十代そこらの若者の口にするあまりに安易な「世の中お金。」という言葉。
それでも私は言いたい「最後は愛でしょ。」と。
ちなみに、後輩に向けケンシロウの名言を放った時、私の鼻からは少し、鼻水が垂れていた。
aloha shigeru!!!