日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

星の数ほど存在する、禁煙法、試みるたびに、私は思い出す

よっさんの恋、愛の力で禁煙

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 タバコに対しては相当な知識を持っていると自負している私。
 タバコというか禁煙法に対してだ。

  勉強していく内に禁煙という言葉そのモノが、ナンセンスで、ひょっとしたらこの国の喫煙者を増やすために採られている一つの策略ではないかと考えるようになった。
 まぁそんな事はどうでもいい。
 結局様々な脱喫煙法を試してきた訳だが、一周回り切って、現在は何をしたらいいのか、その方法論がより一層わからなくなり、完全なスランプ状態である。
 
 止めるべきか、いや、止める目的など、そもそもない訳だし、別にいいか。
 そんな事を考える度に思い出す事がある。
 
 男ばかり、四人。
 深夜のファミレス、私とハヤシンバ、よっさんにまっちゃん。
 全くいつもの顔ぶれだ。
 当時、我々四人は年間の三分の一ほどを深夜のファミレスで過ごしていたのではないだろうか。
 働く気力も、夢見る思い上がりもない。
 何もなく過ぎゆく日々。
 そんな若い奴らが群れたら、行く場所は大概の場合深夜のファミレスではないだろうか。
 もちろん、昼過ぎまで寝ている訳だから、集合は夕方近く。
 その日も、いつものように、ファミレスに集合し、意味など到底あるはずもない会話をしていた。
 テーブルの真ん中に置かれた灰皿は”捜査一課”状態である。
 当時の我々の煙の吸引量はおそらく、酸素とハーフ&ハーフ。
 必要な酸素を未来の子供達のためにと、世の中のために貢献していた訳である。
 
 立ちこめる煙に目を細めながら、よっさんが言う。
 「俺、タバコ止めるわ。」
 半年に一度ぐらいは、誰もがこの言葉を口にする。
 実現性が不可能に近い、張りぼてのような言葉に、他の三人はシカトを決め込む。。
 よっさんは繰り返す、「ほんまに止める。マキちゃんがタバコ嫌いって言うねん。」
 ”マキちゃん”このフレーズが出た途端にこれは正気の沙汰ではないと気付く三人。
 ”マキちゃん”とよっさんの出会いはコンパだった。
 このコンパ、もちろん私を含む三人も同席しており、”マキちゃん”は女性陣の中でも一番可愛く、カジュアルでスレンダー、当時のよっさんのどストライクだったのだ。
 コンパ後、二人が何となく、いい感じになっていた事は皆知っていたが、認めたくない思いが強く、その話にはあまり触れてこなかった。
 「タバコ止めて、マキちゃんと付き合う。今回は本気や。」
 よっさんは持っていたタバコの残りを私、ハヤシンバ、まっちゃんに配りだした。
 今回ばかりは、本気のようだ。タバコを止める時ってこんな感じなのか、愛の力をもってすれば禁煙などたやすい事なのかもしれない、友人の門出を祝い、ホットコーヒーで乾杯をし、その日は帰路についた。

祝いであり、卒業の一本

 それから約二週間、その間に何度もファミレスに集合し、いつもの無駄な時間を過ごしてきたわけだが、よっさんは一度もタバコを吸わなかった。
 友人の頑なな決意を尊重し、他の三人も少しばかり、吸う本数が減ったような気がする。
 そして訪れた、この日。
 よっさんが立ち上がり、「ついにマキちゃんと付き合う事になりました。つまり彼女が出来ました。」
 悔しさと、嫉妬で素直に祝えないのでは、と考えていた我々三人だったが、よっさんの晴れ晴れしい姿と幸せそうな笑顔に、心からの拍手を送った。
 
 まっちゃんがおもむろに、一本のタバコを差し出す。
 よっさんに向けて、「吸え!!!祝いや。」
 ここまで我慢してきたよっさんにそれはないだろう、私とハヤシンバは唖然とする。
 まっちゃんは語る、「少しの間、タバコを我慢して、久々に吸うとタバコはメチャ不味く感じるねん、だからこの一本が祝いであり、卒業の一本なんや。」
 「この一本で、改めてよっさんはタバコを止めれるんや。」
 な、なるほど。理にかなっているのかどうなのか、よくわからんが、実際このような方法で止めた方も存在しているので、多少は理にかなっていると言えるのだろう。
 
 まっちゃんから、手渡された、祝いであり、最後の一本となるタバコをくわえ、火をつけるよっさん。

 まさに支配からの卒業。

 タバコとの多くの思い出を胸に、決意のラスト一本。
 肺の奥深くまで、煙を吸い込む。
 鼻から多量の煙が吐き出される。
 「うんめぇ~!!!」
 まさかの一言だった。
 よっさんは続ける。
 「タバコうんめぇ~!!!」
 全てが水の泡と消えた瞬間だった。
 その帰り道、よっさんがタバコを購入した事は言うまでもない。
 
 結局よっさんとマキちゃんの恋はものの二ヶ月で終結し、後によっさんは「まぁ、タバコ止めるほどの恋愛でもなかったな。」と煙をくゆらせながら語った。

 愛が本物でなかったから、止めれなかったのか、決意が軟弱だからなのか、結局の所、結果論でしか判断出来ない。
 喫煙者の肩身が狭くなる一方の現代、それに伴って、禁煙法も星の数ほど溢れかえっている。
 しかしだ。
 止める方法など、やめた後の”後付け”でしかないのかもしれない。
                aloha shigeru!!!