日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

”あの頃ボクらは中3で”

孤島、淡路島へ 

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 卒業旅行に、チャリンコで淡路島へいこうと言い出したのは、友人のナカオだった。

 ボクにナカオ、早瀬にまっちゃん。
 ボクらは中3だった。

 

 高校の入学式を目前に控え、今しかできない思い出を作るため、チャリンコにまたがり、淡路島を目指すことになったのだ。
 ほかの3人はどうだか知らないが、ボクは当時、淡路島を一周15分ぐらいで回ることのできる、孤島だとおもっていた。中3とはいえあまりに無知である。
 孤島なわけだし島に着くまでが、ほぼ旅で、その後はブラブラ徒歩で島を散策。こんなイメージでチャリンコにまたがったのだから、めでたい話である。

 

 たった今調べてみてわかった。ボクが一周15分と信じた淡路島はシンガポールの本島とほぼ同じ大きさらしい。
 つまり、まぁまぁデカい。
 淡路島にむけて、最初に問題となったのが、早瀬がチャリンコを持っていないということである。
 早速、ボクの付き添いの元、チャリンコを買いに、近くの自転車へと足を運んだ。

早瀬のチャリンコ選びと”奇跡の変速”

 様々な最新のチャリンコが並ぶ中、早瀬が選んだ代物は、あきらかにヤバそうな匂いのする、チープなタイプ。マウンテンではなく、ママチャリでもない、その中間という表現もどこか違う、昔の豆腐屋が配達に使っていたと言えば伝わるだろうか、とにかくレトロ感が満載なタイプだった。

 己の身を預け一心同体となる乗り物だ。感覚でピンときたものを選べば間違いない。ピンときたというよりは値段の安さにやられた。という方が正しいのかもしれないが、本人がいいと言っているのだから仕方がない。
 購入したての新車にまたがり、嬉しそうな早瀬。後ろに乗れとボクに言う。いきなり二ケツを試みるようだ。

 

 後輪の中心にでている僅かなネジの先端に足をかけ、立ったまま乗る。二ケツの王道スタイル。
 軽快に走り出す新車。グングンスピードを上げていく。
 このままフライングして淡路島までいってしまいそうなほどの快適さだ。調子にのった早瀬が更に加速をつけようとしたその時、チャリンコ全体から普通ではない音が、「ガゴンッ!!!」
 マウンテンの変速的なその音、しかしこのチャリンコに変速などという最新の機能はない。
 なぜだか、この「ガゴンッ」で更なる加速が得られた気がする。臆することなく家までこぎ続け無事到着。
 以来、この「ガゴンッ」を二人の間では”奇跡の変速”という呼び名で呼んでいる。
 早瀬が無事にチャリンコを購入し、準備はととのった。

 

 あとは当日を待ち、孤島に向け出発するだけである。
 まだ見ぬ淡路島に向け、期待や不安などはなく、ただ何も考えていなかった。4人だし、ついて行けばなんとかなると。
 中学3年、童貞で無知。あの頃の話である。(続く)