日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

事態に進展があったので報告、3H中嶋さんの話

続3H中嶋さん

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 「事態に進展があった。」
 仕事が終わり、私が帰宅した時に母親が発した第一声である。

  3H中嶋さんのお話は前々回の記事を読んでいただければわかると思うので、ここでは割愛したい。
 昼過ぎに新聞屋が我が家を訪ねて来たらしい。
 完全な平謝りだった。

 「えらい事してしもうて。取り返しのつかない事しました。」

 深々と頭を下げる新聞やn中年男性。
 なんでも、あの3H中嶋さんと赤で記された夕刊は、近くにある病院に配布される予定の物だったらしいのだ。
 3Hは三軒隣でも三時に何かあるでもなく、その病院に入院する中嶋さんの部屋番号だったのだ。我が家の探偵の推理は見事に外れた。推理と言っても、誰でも考えれる答えではあるが。
 個人的に病室に新聞を届けてもらう際、病院側が誰宛の物か把握出来るように、新聞屋が前もって記入しておく仕組みらしいのだ。
 3H中嶋さんの文字を記入した際、その文字があまりにも走り書きだったので、新しくもう一部新聞を出してきて、そこにもう一度3H中嶋さんの文字を書き直したらしい。
 そして失敗した方の3H中嶋さんは混じらないようにどこか別の場所に置いたようだ。

 「その時に捨てればよかったのに、置いとくからこんな事になるんよ。」

 母親が熱の籠った声で言う。

 新聞屋の不手際ではなく、自分の推理が外れ、真相があまりパッとしないものだった事に怒りを覚えているようだ。
 その後、どこでどうなったのか、失敗した方の3H中嶋さんが配布する新聞の束に紛れ込み、我が家に届いたという訳である。
 いたずら電話といたずら書きに接点はなく、中嶋さんは全くの別人であった。
 奇妙な偶然ではあるが、実際に真実が見えてくると、まぁそんなもんだな。と妙に納得出来てしまうものだから、人の心理など、つくづく思いこみで出来ていると感じてしまう。
 新聞屋は言う。「絶対に混じらないように置いたはずだったんですが、どうしてこんな事になったのか、本当にすいません。」
 お詫びに映画のチケットでもくれ。という顔をしたかどうかは定かではないが、うちの母親の事だ、似たような表情を浮かべた事は、容易に想像出来る。
 それにしても人騒がせな話だった。
 偶然というのは怖いモノである。
 いたずら電話の中嶋さんといたずら書きの中嶋さん。

 全く別の地点から発生したそれぞれの中嶋さんは、なぜだか我が家で合流し、結果として、家族の不安を作り上げる形となったのだ。

 ところで、電話の方は一体なんだったのだろうか。

 これは未だ謎のままである。

 しかし、大きなことにならなくて良かった。

 深夜に、コーヒーを飲み一人思う。

 マグカップを洗おうと台所ににおり、玄関の電気が久しぶりに消されているのを見て、安心した夜だった。

                                                                                            aloha shigeru!!!