日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

”加点方式が実らせた恋” Yは風俗嬢とお付き合いしている

f:id:gakushigeyama:20160831172140j:plain

 職場の後輩であるYが風俗嬢と付き合っている。

 なんでまぁ、そんな自ら戦地に赴くようなことをするのか、理解に苦しむのだが、好きになってしまったものはしょうがないのだろう。 

 ミナミのリーズナブルな風俗店、二人はそこで出会い、意気投合。

 今ではお互いを”パートナー”と呼び合う仲らしい。

 このY、女子の評価に関しては普段からかなり厳しい男で有名だ。

 どれほどビジュアルがいい女子でも、”ハイヒールを履いている”や”冬場は毎週スノーボードに行く”など、己の気に入らない点が一つでもあればその女子を罵倒する始末。

 用はへそ曲がりで、器があまりに小さい男である。

 そんなYが風俗で働かれている、いわゆる”プロ”の方とお付き合いをしているとの告白を受け、ボクと上司は飲んでいたアイスコーヒーを吹き出しかけた。

 梅田の純喫茶、夏が終わりかけているこの時期、すでに店内の冷房が寒く感じるほどだ。

 上司が目を丸くして言う。

 「な、なんでまたその子なん?」

 誰もがこの質問をするだろう。

 Yが、その質問待ってました、と言わんばかりの表情で答える。

 「なんかねぇ・・頑張ってる姿がいいんすよ!!それに部屋メッチャ綺麗なんすよ。

 「ただね・・俺的に一つ問題がありまして・・・」

  問題だらけだと思う、ボクと上司。

 「けっこうポッチャリなんですよ。俺、細身が好きなんで」

 「そ、そこかいっ!!」

 ボクと上司のツッコミが思わずシンクロ。

 「その子のこと本気で愛せるんか?結婚出来るんか?」

 後輩の目を覚まそうと、必死で問いかけるボク。

 「そこまでは、まだわかんないすけど、優しい子なんすよ~」

 「もうちょっと痩せてくれればなぁ~」

 あくまで問題は、肉付きがいいということらしい。
 一度、こうなってしまった人に何を言っても無駄だとわかっているボクは、説得を早々に諦め、飲み終えたアイスコーヒーの中に残る氷を見つめながら考えた。

 今回の件に関して言えることは一つ。

 ”加点方式が実らせた恋”ということである。

 Yの性格上、女子に対しての向き合い方は、常に”減点”を探すことなのだ。

 ビジュアルが良ければ良いほどに、性格が良ければ良いほどに、その子の中にある、唯一の欠点を見つけだそうとする。

 そしてその唯一の欠点のみを見つめ、冷める。

 女子に対して、そんな風にしか向き合えない男ってけっこう多い。

 そこにきて、今回の件はスタートラインが”プロ”の方、という大きすぎるアドバンテージを抱えた状態で始まっているものだから、これ以上減点のしようがないのだろう。

 性格が優しく、部屋が綺麗な女子なんて、他にも山ほどいるのに、そんな普通のことにも大きな”加点”が生じる訳である。

 やっぱりYは自分を見失っている。

 再度説得を試みようとしたその時、上司が気まずそうに話し出した。

 「実はオレも、セクキャバで出会った子と、今度デートする予定やねん・・・」

 マ、マジか!!あんた妻子持ちだろ!!

 ボク一人、取り残された感があまりに強い。

 コップの中で溶けた氷がカランと音を立て、ボクは孤独を噛みしめた。

 aloha shigeru!!