日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

芸能界の”菅野美穂” 淡水魚界の”ピラルクー”

お父さんの叫び 

f:id:gakushigeyama:20160509031141j:plain

 その日ボクは、当時付き合っていた彼女と、水族館を訪れていた。

 ボクは水族館が好きだ。
 ジェットコースターや、お化け屋敷で、無意味に寿命を削られるテーマパークよりも、水槽を縦横無尽に泳ぎ回る魚達を観ている方が心が和む。
 

 その日、訪れた水族館には淡水魚コーナーがあった。その中でも”熱帯雨林に生息する魚達”という一画が、ボクの興味を引きつけていた。
 ”ピラルクー”がいる。
 

 みなさん、ご存じだろうか?アマゾン川に生息する、あのデッカい魚を。
 体長は2メートル近くに及び、全身を鋼のような鱗で守られている魚。アマゾンの代名詞的存在であり、淡水魚界のスターだ。

 こういう、おどろおどしい存在のモノに心引かれるボクは、水槽に顔面を擦り付け、”ピラルクー”と睨めっこを、15分ほど続けていたのだった。
 彼女はもちろん、淡水魚などには興味なく、イルカが観たいのか、ラッコが観たいのか、知らないが、近くのベンチでつまらなそうに携帯をいじっている。
 

 家族連れが淡水魚コーナーにやってきた。
 お父さんの様子がおかしい。完全な千鳥足、顔は真っ赤で、焦点も定まっておらず、はっちゃけた様子。
 つまり、ただの酔っぱらいである。
 子供たちが二人、まだ幼稚園児だろうか、お母さんに手を引かれ、このおどろおどしい魚の前にやってきたのだ。
 

 水槽に顔面を擦り付けるボクの真横に、同じように顔面を擦り付けるお父さん。やはり、アルコールの匂いが鼻につく。
 子供たちは”ピラルクー”を一目見て、泣き出してしまう。
 当然だと思う。幼稚園児にとって、”ピラルクー”はただの怪物でしかない。
 

 ギャン泣きする子供たちをなだめようと、”ピラルクー”を指さし、お父さんが叫んだ。
 「みてみー!!”菅野美穂”がおるでーー!!」
 ボクは我慢出来ずに爆笑、お父さんと目が合い、”やりますねぇ”のシグナル。
 その後も「美穂ー!!美穂ー!!」を連発。
 子供たちのギャン泣きは止まるわけがない。
 そもそも、菅野美穂が誰かも知らないだろうし・・・
 最後はお母さんが子供たちに目隠しをして、逃げるように”淡水魚コーナー”を去っていった。
 ”ピラルクー”を観て、”菅野美穂”。普通は思いつかない。
 昼間から酔っぱらっている、中年の発言は想像を遙かに越える。
 

 実は今、パソコンの画面に”ピラルクー”を、手元のスマホに”菅野美穂”を。双方を映し出して比較してみている。
 ”菅野美穂”は間違いなく美しい。ボクのタイプだ。
 しかし、”ピラルクー”と似ているということを、全面的に否定することは出来ない気がする。
 見れば見るほどにそんな気がする。

                                                               aloha shigeru!!!