ベタという淡水魚はとてもおもしろい、専門店が出来るのも納得
とても興味がそそられる
私のお客様の一人、K君が、アルバイトを始めたという。
大学生のK君、あまり喋らない無口なタイプなので、おそらくバイト先は工場のライン作業か肉体労働の代名詞、引っ越し屋かな、と思いきや、なんと熱帯魚屋さん。
意外と思っている私にさらにもう一言、「ベタっていう淡水魚しか売ってない店なんです。」
熱帯魚屋なのに、一種類しか売っていない。
私はこういうのに、とてもそそられる。
一つのことに特化しているお店、こだわり抜かなければ、そんな風にはならないだろう。
しかし、ベタとはなんなんだ。
聞いたこともないその魚を頭にイメージしつつ、専門店があるぐらいだからよほど不思議な魚か、もしくはとてもバリエーションに富んでいるのだろうと考える。
その後実際にベタを購入するまで、一週間もかかっていない。
実はこの話、三年も前の話なのだ。
今やもう、購入したベタはお亡くなりになってしまったのだが、約二年の間、私の癒しであった不思議な淡水魚ベタについて、少し書きたいと思う。
水の孔雀、その美しさと素晴らしさ
購入したのは、会社近くの、ホームセンター。
熱帯魚コーナーが何処にあるのかわからず、通りかかった店員に声をかけた。
定員は言う。「うちは熱帯魚コーナーがほとんどなくて、今はベタぐらいしかおいてないんです。」
それだ。
いきなり、どストライクの返答で興奮を抑えきれない私。
というか、ベタはそんなに知られた存在なのか、流行を先取りと考えていた私の思惑は崩れ落ちたものの、そこにあるならば買う以外に選択肢はない。
このようにして、約二年に及ぶ、ベタとの共同生活がスタートしたのだった。
まずこのベタ、元々の出身はタイのメコン川流域らしい、らしいというのも私自身このベタについての記事を書くまで、東南アジア辺りのどこか、というぐらいにしか知らなかったのだ。
二年もの付き合いがあったにも関わらず、出身地も把握出来ていないとは、恥ずかしい事この上ない。
見た目であるが、現在、日本で売られているタイプのベタは色鮮やかなものが多く。非常に美しい。
写真を見ていただければ、一目瞭然なのだが、ここは文章として残したいので、少しおつきあいを。
尾鰭を全身にまとい、魚というよりは孔雀。
水の孔雀という形容が最も相応しいのではないだろうか。
単色のものもいるが、代表的なものは緑、赤、黒という多色が尾鰭に連なり、大きな羽のような形を作り上げている。
この大きな羽の形が、多種多様であり、より美しいベタを作り上げることに注力しているのが、マニアの方々なのである。
とてもタフ、故に獰猛なのだ
さて、この美しき、水の孔雀ベタ。
ベタの素晴らしさは見た目だけではない。
私が二年を共に過ごす中で、最も感じた素晴らしさ、それは手間が、かからないという事である。
まず第一に、ワイングラスでも飼育出来てしまう。
大層な何万もする水槽などいらない。
ベタは空気呼吸とエラ呼吸を使い分けることが出来、いわゆるブクブクも必要ないのだ。
さらにメコン川出身というだけあって、水質にとても鈍感である。
水替えも週に一度ぐらい、けっこうほったらかしにしていても、悠々と生き延びる。
とてもタフな淡水魚なのだ。
しかしだ、タフな故に問題もある。
二匹を同時に一つの水槽に入れることが出来ない。
入れてしまったら最後、水槽内は水中コロシアムと化し、どちらかの命が尽きるまで、血みどろの闘いを繰り広げる事だろう。
自然界に生きる生物において、タフとは獰猛という意味でしかないのかもしれない。
地元タイではこの気質を利用して、お互いを闘わせる事が遊戯となっており、つまり生粋のヤンチャ野郎と言えるだろう。
そんなヤンチャ野郎も我が国日本では、あくまで鑑賞用であり、大して世話もしてないのに、常に元気で、そこに存在してくれている。
グラスに少しの水草を浮かべ、色鮮やかなベタを一匹放つ。
ベタを肴に酒を飲む。
地元のヤンチャ野郎がなんと大人しい事か、その大人しさは敵を失った喪失感からくるのだろうか。
それとも、もう闘わなくてもいいという安堵感なのか。
そんな事を考え夜が更けていく。
いかがであろうか。
ベタが皆さんに少しは伝わったかな。
写真で十分だって?
確かにそうかもしれない。それでもベタについて書かずにはいられなかったのだ。
思い出とはそういうものだろう。
あれから三年、iPhone6Sのサンプル画面にはベタが使用されたのは言うまでもない。
aloha shigeru!!!