日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

ミナミでの宴~幹事してみました~

 これはコンパなのだ

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 久方ぶりの飲み会。

 時期的に飲み会は忘年会や新年会と多々あった。

 それでも今回あえて、久方ぶりと言ったのは、今回の飲み会が男女混合であり、出会いの場、いわゆるコンパだからだ。

  しかも私は幹事。はるか昔、同じくコンパで知り合った女性と、なんとなく連絡をとる形となり、「久しぶりに飲もうよ。」「二人じゃなんだから、人数集めて。」

 そんなこんなで、この宴は開催される運びとなった。

 場所は心斎橋、時刻は少し遅めのPM8時から。

 人数は5対5の計10名。

 これはコンパ界の黄金比率らしい。

 開催場所として私が選んだのは、居酒屋ではなく、ダイニングバー。

 暗めの照明と、店内に広がる水槽。水槽の中のサカナたちは海鮮料理にされるでもなく、人間どものお洒落と男の見栄っ張りのために存在する訳で、食欲をそそられる類の魚とは程遠く、青や黄色がメインの色彩豊かな群れの集まりだ。

 こんな店に連れて来たら大概の女子は喜ぶわけで、「サカナキレイー。」「お洒落ー。」となる。

 女子を喜ばせるにはデカめの水槽と色とりどりのサカナだ。

 これは私が二十代で学んだ、女子に対しての数少ない知識の一つだ。

 家にデカめの水槽を置こうか、そこに縦横無尽に泳ぎ回るサカナたちを放ち、小規模水族館の館長に就任し、女子を連れ込む。

 そんな事を真剣に悩めていた二十代が懐かしい。

 さて、定刻通り開催されたアクアリウム内でのコンパ。

 男女を交互に席に着かせ、話しやすい環境を整える。幹事の仕事の一つだ。

 最初の一杯が運ばれてくるまでの僅かな時間。この時間が苦手だ。

 飲むお酒がなく、口にする食べ物もない。手持無沙汰でシラフだから何をしていいかわからん。

 あの無言の時間、隣では同じような集まりの男女がいい感じに盛り上がっている。

 あんな空気感をこれから作り出せるのかと、憂鬱が頭をもたげる。

 そんな空気の中、決まって口にするのは、「女の子たちはどういう関係?」という質問。名前はこの後の自己紹介タイムがあるわけだし、そこまで温めておいて、女子たちの繋がりを聞き出す。

 職場の同僚や高校時代の同期。こんな答えがほとんどだ。

 ところで今回の男性メンバーだが、中学時代からの親友Hとその他は私の仕事関係のお客様。男同士も知らない間柄なのである。

 5人の内、4人が30歳前後、一人だけ特別ゲストに21歳の大学生という布陣で挑む。

 一杯目が運ばれ、ジョッキ片手に私が幹事として挨拶。

 「こんな時間に集まっていただき、嬉しく思います。皆さんの出会いに乾杯。」

 硬めの挨拶をふざけた顔で言う。これぐらいがいい。

 乾杯のあいさつで走り出した雄どもは、飲める雄も、飲めない雄も一杯目を、いつもとは比べ物にならない速さで、喉に流し込む。

 緊張の緩和にはアルコールだ。酔ってしまえばなんとでもなる。

 私はどちらかというと、そこそこ飲める方の雄だ。普段はそれでいいのだが、こんな時はすぐに酔ってしまって、やたらと女子に絡む雄を羨ましく思う。

 一杯目を一気に流し込み、追加の注文を即座に行う。

 ここで自己紹介タイムに突入。

 自己紹介タイムと聞くと、各個人が名前を言い、何か一言、という流れが一般的だろう。

 それは王道であるし、私が過去に参加したことのある、コンパでもそれを当たり前と思い、流れに身を任せてきた。

 しかし今回に関しては、女子側の大きな緊張と不安を肌で感じたので、幹事が代表して一人ずつ、友人を紹介していく運びとなった。

 雄どもを一人ずつ、私が紹介していく。

 名前と年齢、私との間柄を説明。親友のHは好きな食べ物はカレー、だから顔はインド風という自虐ネタでそこそこの笑いを獲得していた。

 雄どもの紹介はそこそこに、肝心の女子の紹介。

 幹事のKちゃんが一人ずつ、紹介していく。

 ちなみに幹事のKちゃんは小学校の教員。

 年齢は私と同じ31歳。教員というだけあって、人前で喋るのはなかなか上手い。

 私の右隣に座るメガネをかけた、明らかにまじめ風の女子は役所で働く公務員。左隣に座る女子はKちゃんと同じ学校教員。

 そして奥に座る二人も同じ学校の教員。

 つまり全員公務員で5人中4人が教壇に立つ、人を教える立場の人間。

 この宴は夜の課外授業か、人間として、一から教えられそうな気がして、不安と共に二杯目のビールを喉に流し込む。

 しかし、この公務員5人組、みな非常にいい子達だった。

 10分もすれば、アルコールの力もあり、ワイワイといい雰囲気に。

 私のくだらんボケにもしっかり笑ってくれるし、話すネタがなくなると、女子側から様々な質問もしてきてくれる。

 親友のHは公務員等のいかにもちゃんとした職業を持つ女子にアレルギーがあるが、このHすらも、楽しそうにこのひと時を過ごしている。

 ところで、私はこの女子5人の内、最初に見た時から奥に座る一人の女子が気になっていた。

 ここでは名前をAちゃんとしておこう。

 こういう会において、第一印象とは、おそらく全てなのだ。

 一目見て、第一印象で、運命の人、キラキラしていた。

 書いていてアホ臭くなるが、結婚などはこういう勘違いが引き起こす、産物なのだろう。

 Aちゃんとは席が離れているため、まだ何も会話が出来ていない。

 幹事の独断で、早々と席替えを実施してしまおうか、いや、もう少し我慢だ。

 幹事としての責任と、雄としての本能が心の中でぶつかり合う。

 そうこうしている内に時間は半分を経過。

 一度トイレに行くと言って席を外す。

 トイレの鏡で、流行りの七三スタイルが崩れていないことを確認。

 席に戻り、一呼吸おいて、「席替え行きましょうか。」

 女子はそのまま、男性陣が横に二席移動するという形で、新たな陣形が組みあがった。

 さて横に二席移動することで運命の人Aちゃんの隣に腰を下ろした私。

 アルコールもいい感じに廻っていたので、積極的に絡む。

 Aちゃんは大阪でも南のほうの出身で、現在は実家の近くで一人暮らし彼氏は、一応いないらしい。

 コンパに参加しているのだからと、全員が彼氏なしと思ったら大間違いだ。

 彼氏の有無に関わらず、コンパに来る子は来る。間違いない。

 とりあえず彼氏なしと聞き、ホッとする。

 親友のHが横から「好きな男性のタイプは?芸能人で言うと?」と質問。

 「濃い目の顔でオダギリジョー的な感じ。」

 オダギリか、私のエラの張り具合はオダギリというか、カタギリハイリ。

 エラの張り具合を隠すために、髭を生やし、陰影を付けている。

 オダギリとカタギリ、ニアミスだが、通用するだろうか。

 そんな感じでAちゃんとのファーストコンタクトが行われ、その後は家族構成やら、血液型、趣味等の会話で盛り上がった。

 第一印象から、そこそこの時間を話し終え、やっぱりAちゃんはいい子だった。

 親友のHもAちゃんと仲の良い、少し天然系の女子、Bちゃんに狙いを定めた様子。

 Hが目で私に合図を送る。「次行くぞ。」と。

 ちょうどいい時間だったという事もあり、会は無事に閉幕。

 女性陣を駅の改札まで送るという事で、全員で移動。

 移動の最中、Hが天然女子Bに二件目の打診をする。

 私はもちろんAちゃんに。

 二人とも明日は休み、まんざらでもない感じ。

 という事で私とH、Aちゃんと天然女子Bの四人で、二件目に移動。

 その他のメンバーは皆、散れぢれに帰路について行った。

 普通、二件目はバーでまったりと、しかし時間に焦る我々はなぜだか最初に目に入った、多国籍風の鍋料理屋に突入。

 これは完全なミスチョイスだ。

 しかし、こんな事ぐらいで、男を嫌う女子なら、最初からいらないという、ミスチョイスをした時の、男の言い訳として間違いなく上位にランクインする、開き直りで乗り切る。

 ただ、こんな開き直りとは関係なく、女子二人はよく笑い、喋り、四人での密会はとてもいい時間だった。

 Hは思想家肌なもんだから話す内容が小難しく、Aちゃんは理解が大変そう、天然女子Bにはわかるらしい。

 なんだかHと天然女子Bにはいい未来がありそうな予感がする。

 終電ギリギリまで喋り、二人を駅改札まで送る。

 別れ際に連絡先の交換。

 こうして私と親友Hはそれぞれの女性と、今後の未来をなんとか繋ぎ合わせた。

 残された雄二匹に終電はもちろんない。

 千日前を歩き、途中の立ち食いソバ屋に寄る。

 ソバをすすり、宴を振り返る。店内に流れる演歌がソバの汁と共に、身に染み入る。

 Hが私に向って、「ありがとう。」と言った。

 最近、女子と絡むことがめっきりなくなったHには、とても新鮮だったのだろう。

 時刻はAM2時。

 近くの天然温泉で朝まで過ごそう。

 温泉に入る前に、運命となるかもしれない女子二人に、それぞれメールをしっかり打とう。

 そんな事を思いながら、北風吹き付ける千日前を西へと向かった。

                                                                                                           aloha shigeru!!!