男の”指先”と新たな花粉対策
上司がみせた”フィンガーローリング”
仕事が休み時間に入り、休憩室へと足を運んだ。
休憩室には上司が一人、昼食を食べ終わり、携帯をいじっている様子。
「お疲れさまです。」と声をかけ、上司の斜め向かいに座る。
家から持参した、インスタントラーメンとおにぎり、これが本日の昼食である。
ラーメンをすすり、おにぎりをかじりながら、たわいもない話題で盛り上がる私と上司。
上司が鞄からハンドクリームを取り出した。
身長180センチ、体重90キロ近く、バリバリの体育会系で鍛えられた鋼の肉体。
ハンドクリームを持ち歩くなど、似合わないにもほどがある。
チューブからクリームを絞り出し、手の平全体に薄く伸ばしていく。
そのまま、手の甲へ、10本ある指先一つ一つに対して、神経質なまでにクリームを馴染ませ、染み込ませていく。
なんという女々しさだ。その身体つきで、行いはまるでOLのようである。
”女性は男性の指先を見ている”確かにその通りかもしれない。
指先は清潔感の象徴であり、その人の美への意識が最も映し出される肉体の一部、そんなことを誰かが言っていたような気がする。
上司の美意識への高さは、クリームを神経質なまでに擦り込ませているその姿からも伺い知れる。
チューブを手に持ち、クリームをさらに追加するようだ。
先程よりも少な目にクリームを絞り出し、指先に。
ここで上司は予想外の行動に出る。
指先に絞り出したクリームを鼻の穴へ。
2本の人差し指を同時に左右の鼻の穴へぶち込み、指先をとても器用にローリングし出したのである。
ローリングによって鼻の内部に擦り込まれるクリーム。
美への意識は人をおかしくするのかもしれない。
呆気にとられながら上司の”フィンガーローリング”を見つめる私。
上司が私の視線に気付いたようだ。
指先を抜くことなく、横目で一言。
「これ、花粉症に効くねん。一回やってみ。」
両人差し指を鼻の穴に突っ込んでいる影響で、声はとてもくぐもっている。
せめて、指を抜いて話してほしい。
どうやらこの上司、あまりの花粉症のきつさに、半狂乱になり、指先にぬっていたハンドクリームを鼻にぶち込んだらしい。
その結果、感じた効果。
半狂乱によって、生み出された新たな花粉対策。
ハンドクリームが花粉症に効くかどうかは別として、その擦り込む課程は、美からあまりにかけ離れたものである。
そしてあまりに間抜けである。
そんなことも知らず、女性はこの”フィンガーローリング”に使われている指先を見て、清潔感があると感じるのだろう。
四月も半ばになり、ヒノキの花粉が中を舞いだした。
スギ以上に私の天敵となるヒノキ。
ハンドクリームによる予防、試してみる価値はあるかもしれない。
とは言え、”フィンガーローリング”だけは控えようと思う。
aloha shigeru!!!