日々楽書~針小棒大~

くだらない事を宇宙規模で

ちょうどいい具合は何処へ?へび男になったスゲモト

消えゆく「ちょうどいい具合」

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 奇跡的に四季が訪れる我が国、日本において、最近ではこの四季の訪れが危ぶまれている気がしてならない。

 季節はクソ暑いか、クソ寒いかの二つになりつつあるのではないだろうか。
 「ちょうどいい具合」が失われつつあるのだ。
 そして、「ちょうどいい具合」は自然界以上に、我々人間界でも失われつつある。

 勝ちか、負けか、白か黒か、ゼロか、百か、とてもおもしろみに欠けた判断が、今の世を浸食しつつある事は、私がここで言うまでもない。

 必要過多を誇る富豪が溢れかえったかと思えば、必要最低限の物しか持たない、ミニマリストなる者が現れたり、人の発想はどこまでも、単純明快でファンキーになりつつある。

 ちょうどいい具合を確実に見失いつつある現代社会。
 「過ぎたるは及ばざるが如し」
 なんでもやり過ぎは駄目ですよ、ほどほどが大事ですよ。と昔母親によく言われた記憶がある。

友人のスゲモト

 私の友人のスゲモト(本名 杉本 修)もちょうどいい具合を見失った人の一人だ。
 ある冬の夜、スゲモトは路上に出店している占い師、いわゆるストリート占い師に、どうすれば自分は女にモテるのかを相談したらしい。
 ストリート占い師はこう言った。
 「ヘビが見えます、あなたの人生において、最も大事にしなければ行けないモノはヘビです。」と。
 その時点でかなり胡散臭いのだが、スゲモトの心中は相当、深刻だったのだろう。
 心から信じ、崇拝するべきモノが見つかった時、人がおかしな方向に狂うという事は、訳の分からん宗教団体の信者を見ていればよくわかる。
 
 その後のスゲモトのヘビに対しての徹底ぶりは、明らかに正気の沙汰ではなかった。
 まず第一に自宅にヘビを飼った。
 コーンスネークという、ペットとしてヘビの中ではとてもベターなタイプのヘビである。日本ではアカダイショウと言われているヘビだ。
 これは私も実際に自宅に招かれ、見せてもらったが、は虫類を絵に描いたようなヘビで、ヘビというか、ただのは虫類である。
 スゲモトは言う。「俺、考えてみれば、へび年やからなぁ、へびと共に生きて行くって、当然のことかもしれんわ。」
 

 それが当然なら、私はネズミ年なのでネズミと共に、ウマ年の方はジョッキーに、辰年の方は「ネバーエンディングストーリー」の主人公にならなければいけない。
 全く、めでたい話である。

へび男、スゲモト

 それから三ヶ月後、スゲモトと私の共通の友人の結婚式が開かれた。
 コーンスネークを見せてもらってから、仕事の忙しさもあり、スゲモトとは会うことがなかった。
 おかしな方向に走り始めた友人を、僅かながらに心配しながら、いずれ冷めるだろうと、たかをくくっていた私。
 式場に姿を見せた、スゲモトを見て、私の考えが甘かった事を痛感させられる。
 友人の結婚式に現れたスゲモトは上下ヘビ柄のスーツにヘビ柄のネクタイ、靴はもちろんへび皮の靴という出で立ちで現れたのだ。
 

 これではただのへびだ。
 私の隣に腰を落ち着かせ、スゲモトは言う。
 「みんな俺のこと見てるな、やっぱへびの効果でいい出会いがあるんやわ。」と。
 人はどうすれば、これほどまでに思いこみが強く生きれるのだろうか、私も人一倍思いこみが強いと自負しているが、このへび男の足下にも及ばないだろう。

 スゲモトは一日、胸を張り、へびのごとく、式場を練り歩き、新婦の友人一同から冷ややかな視線を浴びた。

 あれから、十年、スゲモトはめでたく結婚し、コーンスネークはお亡くなりになり、へびの呪いはすっかり解けたようだ。

 「過ぎたるは及ばざるが如し」

 ちょうどいい具合を大切にしたいと思う。

                                                                                    aloha shigeru!!!