外国人観光客が話しかけた相手は、よりによって修学旅行生だった
なかもず行き 梅田からの駅順
梅田→淀屋橋→本町→心斎橋→なんば
なかもず行きの電車が、本町駅に到着する直前の出来事。
私の向かいには、外国人マダム(おそらくヨーロッパ系)、大きなトラベルバックを足元に置き、OSAKAを肌で感じに来たのだろう。
最近、大阪はこんな光景があまりにも当たり前だ。
淀屋橋駅を出発した直後、マダムはしきりに、辺りをきょろきょろと気にしだした。
その表情から読み取れるのは、明らかに不安であるという事、自分の居場所がどこなのか、皆目見当がつかない時、人はこんな顔をするのだろう。
マダムは立ち上がり、すぐそばにいた、大阪の人ではない、どこかの田舎から来た、修学旅行生に声をかけた。
よりによって修学旅行生。
彼らは六人組、そのうちの一人が声をかけられ、振り返る。
戸惑いを見せる、修学旅行生、自分のホームではない完全なアウェーで、しかも他国の人に何かを尋ねられる。
マダムが何を尋ねたか、私には聞き取れない。
修学旅行生が必死に答える。
「次の次、ネクスト・・・ネクスト・・・ええっと・・。」
なるほど、どう尋ねられたのか定かではないが、修学旅行生は「次の次」をなんとか英語で伝えようとしているようだ。
おそらくだが、マダムは難波駅までは、残り何駅なのか?と聞いたのではないだろうか。
「次の次」がどうにも伝えられない修学旅行生、とそこにもう一人の修学旅行生が。
一人苦しんでいた修学旅行生が、途中参加の友人に助けを求める。
「次の次は英語で何?」
友人が苦笑いで答える、「ネクスト、アンドネクスト・・・」
結局、喋れない奴が一人増えただけだった。
マダムの期待に応えようと、必死の二人。
本当に真面目な二人のようだ。
「次の次」が伝えられず、無情にも時は過ぎていく。
本町駅に着く直前に始まった、この攻防は、舞台を心斎橋駅に移そうとしていた。
地下鉄の無機質な機械音、車内で何が繰り広げられようと、大阪の地下は人々にあまりにも無関心だ。
心斎橋駅に到着。
と、同時に「ネクスト。」修学旅行生は自信満々に大きな声でマダムに言い放った。
一駅進み、「次の次」が「次」に変わったのだ。
修学旅行生がその瞬間を見計らっていた訳ではない事は、直前までの狼狽ぶりでよくわかる。
運良く切り抜けた訳だ。
一駅進む間をなんとか切り抜け、発した、渾身のネクスト。
何処から来たか知らぬ、修学旅行生よ。
本当にお疲れさま。
そして、ありがとう。
地方とか大阪とか関係なく、君は日本を代表して、マダムの不安を拭いとったのだ。
それにしても「次の次」、セカンドと言えばいいのかな、私も勉強しておかなければいけない。
aloha shigeru!!!