Dサロン心斎橋店、ここの喫煙室はとてもおすすめ
月に一度の癒しと行き過ぎた妄想
Dサロン心斎橋。
私が月に一度髪の毛を切り、カラーを入れに行く美容院だ。
店長を務めることの出来る技術を持つ美容師達が、おそらく三十名ほどは在籍しており、店内はとても広く、個人が一つの商店となり、切磋琢磨している様子が伺える。
私はこの雰囲気がとても好きだ。
また、地下鉄御堂筋線、もしくは長堀鶴見緑地線の心斎橋駅から地上に出て、僅か数十秒の位置に店舗はある。
長堀通りの北側に位置し、東急ハンズ、ディーゼルの並びに店を構えている。
難波に勤めている私にとって、アクセスも非常にありがたい。
料金だが、私は毎月のようにクーポン券を使用し、カットとカラー、そこに指名料を込みで五千円。
カットだけでなく、カラーも入れ、しかもお気に入りの美容師さんを指名してこの値段。
財布が毎月、万事休すの私にとっては嬉しい限りである。
さて、このDサロン心斎橋、私がこの美容室を愛してやまない理由は店内の雰囲気や料金形態だけではない。
喫煙室だ。
一通りカットが終わり、カラーを入れ、色が染まるまでに十分ほどの時間がある。
この間に飲み物を提供してくれ、喫煙者は喫煙室に案内してもらえる。
この喫煙室が素晴らしい。
と言うのも、このDサロン、ビルの十階にあり、喫煙室からはライトアップされた長堀通りとミナミの街並みが見下ろせる。
ライトアップと書いたのは、私が仕事終わりの夜の時間帯にしか行かないからである。夜間専門のお店ではない。
僅か五名ほどで満室になってしまう狭き世界、煙がもうもうと立ちこめる一室で、きらびやかな夜の街を見つめる。
向かいのビルには相席屋の看板が、今宵も男女は出会いを求めて、この街をさまようのだろう。
あの中で今日も出会いがあり、それが遙かな未来に繋がるのかな。
心斎橋筋商店街は小さな点の塊を飲み込み、同時に吐き出して行く。
一人暮らしをしていたあの頃、長堀通りを西から東へ毎晩ランニングしていた時期があった。
新なにわ筋からなにわ筋、四つ橋筋、御堂筋、そして堺筋で折り返す。
行きは長堀の南側、帰りは北側を駆け抜けていた。
走ることで、一人暮らしの孤独感と、やりたい事が見つからない虚無感を振り切ろうとしていたのかもしれない。
あの頃の自分はここからどんな風に見えたのだろう。
当時の自分を、喫煙室から見下ろす景色の中に蘇らせ、毛が染まりゆく僅か十分を存分に浸りきる。
喫煙室のドアが開き、私の髪を知り尽くす一人の女性が笑顔を見せる。
流す時が来たのだ。
いっそのこと、この脳味噌に刻まれた下らない幻想も洗い流してもらおうか。
aloha shigeru